実録!試割り
試割りとは、空手の一撃必殺を試す為の修行の一部だと考えられます。
人体に当てる技と、動かない板や瓦を割る事は、全く異なる要素で有る事は事実ですが、
空手とは無数の要素で構成される武術だと言えます。
空手の威力が人体で実験出来ないゆえに、試割りやルールを持った試合で日々の修行の成果を試す必要が有り
また稽古に一定の方向(目標)を持たせる為の指標の一つが試割りだと考えられます。
ここに公開する映像は、このようにネットで公開する目的で行われたものでは有りません。
日々の修行の成果を、中西杯の演武会で実演されたり、或いは実験的に観衆の居ない体育館などで
実験された時の映像です。
瓦
使用している瓦は、地元の業者から廃材を譲ってもらって使っています。試割り用の瓦を購入すると高くつくからです。
瓦と言うのは、裏側に割りやすくするための筋が入っていますが、これは試割りの為で無く、瓦と言うのは
そう言う物なのです。廃材、いわゆる不良品を使った為に積んだ時の建て付けが悪く、思わぬアクシデントを生むのでした。
正拳による瓦割り 演武:中西伸治最高総師範
正拳で瓦を割る場合、打点は腰より下が理想です。
瓦は廃材利用の為、積んだ時点ですでに右に傾いており、中央の隙間は問題が
無いのですが両側にも隙間が出来てしまっています。右側にバランスが崩れてしまいました。
手刀による瓦割り 演武:中西伸治最高総師範
全日本オープン(浜松)で行われた演武です。この時は、手刀の勢いが途中で止まってしまいました。
瓦は1枚を割る力は小さいのですが、それを持続させるのが非常に困難です。
リハーサルでは27枚を一撃で割っているのですが
予算の関係や、演武の後の破棄する手間などを考えると何度もリハーサルが出来ない演武なので
残念ながら、きれいに25枚を成功した映像は残っていません。
ブロック
使用しているブロックは、全て軽重量ブロックです。外装用の建材ブロックは、おそらくは人力で割る事が
不可能だと思われますし、時折見かけるのは割ったときに 土煙をたてて崩れるように割れるブロックも
有る様ですが、少なくともそんな物を割っても何の意味も有りません。
軽重量と言っても、割れないような構造を持って市販されている物で、その強度はかなりのものです。
各会道場の先生方もいろいろな方法で挑戦されましたが、割る事は出来ませんでした。
中西伸治最高師範の他には中西道場の松本支部長が猿尾で割る事が出来たのみです。
回し蹴り(足甲)によるブロック割り 演武:中西伸治最高総師範 動画挿入
この演武は試験的に行ったものでうまくいったら中西杯で公開される予定でした。
通常ブロックは両端を固定し、上から歪みを与えれば理論的には破断を起こしますが
このように立てた状態で割る事はきわめて困難だと思えます。
割る事には成功しましたが、あまりにも足へのダメージが大きい為、公開は中断されました。
裏拳によるブロック割り 演武:中西伸治最高総師範
ブロックは、両端を固定した状態で3mmの歪みを作るブロックの下側から破断を起こします。
歪みを作る為には、体重を乗せると有利になるのですが、裏拳を使う事で体重を利用する事が
出来なくなっています。拳のスピードに加え当たる瞬間に手首を返し瞬時にブロックに
衝撃を与える事で、この試割りを達成しています。
手刀によるブロック割り 演武:中西伸治最高総師範
裏拳打ちでは、手首の返しで力を増大させますが、手刀では、手首の返しが使えません。
まさに、うち下ろすスピードだけで、ブロックに破断を発生させています。
映像に残っているのも珍しい演武です。
バット
少年部の選手が演武するものは試割り用のバットですが、少なくとも2000年までの、
師範や支部長の演武にはスポーツ店で購入した圧縮バットが使用されています。
2001年の中西杯では試割り用が使用されました。試割り用のバットは、弾力が無いのできれいに折れます。
圧縮バットは、折れる時は快音と共にきれいに折れますが、失敗すると、芯だけ折れて本体は折れない場合が有ります。
手刀による圧縮バット4分の1折り 演武:中西伸治最高総師範 動画挿入
別の演武で2つ折りになった圧縮バットのグリップの部分をさらに手刀で折ると言う
難易度の高い試割りです。この試割りは折れた口が斜めに折れていると比較的、折れ易いのですが
この時のバットはしっかりと、円筒型の状態をとどめています。
非常に画像が見づらいのですが、圧縮バットのグリップが『く』の字に折れています。
回し蹴りによる無固定圧縮バット折り 演武:中西伸治最高総師範 動画挿入
無固定の圧縮バットを一撃で折る。
全世界硬式武道選手権大会で行われた演武です。
ビール瓶
手刀によるビール瓶折り 演武:中西伸治最高総師範 動画挿入
酒屋で買って来たアサヒ・スーパードライの瓶です。当時、師範は2回に一回の確率で瓶を割ることが出来ました。
試割り当日(第2回中西杯)は、4本のビールを購入し、その内の1本目で成功しました
一般にビール瓶切りとして、知られている試割りですが師範が実演したのは、切断では無く瓶の首を折ったのです。
あえてここでは、正確に事実を伝える為に切ると言う表現は避けました。
ビール瓶には、ご存じのように2種類有って、口と胴部のつなぎめがなだらかなタイプはこのように、折れません。
つなぎ目に角度を持ったタイプが、そこに力学的な境界が出来ます。
さらに、栓を抜いて中のビールをその境界まであけます。
残ったビールが瓶の重りとなってビールが注がれている境界面がさらに力学的な境界をはっきり作ります。
このように、ギリギリの条件を付加してさらに、おそらくは人間の限界近くのスピードで口の先の方に
力を与える事でこのように瓶の首だけを飛ばす事が出来るのです。
手刀がビール瓶に接近するコマを限界まで編集したのですがわずか3コマで手刀はビール瓶を通過し
瓶が折れた瞬間が写っていません。動画で見ないとその凄さが正確に伝わらない演武です。
試割りは空手を表現する為のキーワードの一つであり、一般の人が空手を評価する場合は、
「瓦は何枚割れますか?」と言うような会話が多く見られます。
これは【空手=試割り】と勘違いしている代表的な例で、
テレビ番組などでも、割れやすくした素材を割って見せると言う演出がしばしば見られる為、
空手を知らない人に試割りに関して多くの誤解を与える結果になっています。
そのような、演出まがいの物と一定の仕切りを入れたいが為にこの画像の公開にあたっては、
使用している素材を明確にすると言う事を前提に致しました。